ASOC(アプリケーションセキュリティのオーケストレーションと相関付け)
アプリケーションセキュリティの概要
進化を続けるサイバー脅威の状況によって、かつてはセキュリティが後回しにされたソフトウェア設計のパラダイムが劇的に変化しました。現在の「Everything as Code(すべてをコード化する)」時代では、成熟したアプリケーションセキュリティがかつてないほど重要です。サイバー脅威の急速な進化に伴い、攻撃対象領域がアプリケーションとAPIに拡大しています。実際、ITガバナンスからの業界データによると、2023年の上位10件のデータ侵害のうち8件がアプリケーションの攻撃対象領域に関連していました。この傾向に応えて、高度なアプリケーションセキュリティで役に立つツールとして、ASOC(アプリケーションセキュリティのオーケストレーションと相関付け)などの特別なセキュリティアプローチが新たに出現しています。
ASOCとは?
セキュリティデータ管理の複雑さに対応するために、ASOCツールが登場しました。このツールによって、開発から本番環境までのライフサイクル全体においてアプリケーションリスクへの露出状況が包括的に可視化されます。これらのソリューションは、さまざまなソース(SAST、DAST、IAST、SCAツールなど)からのアプリケーションスキャンデータを統合して、アプリケーションの弱点とセキュリティリスクを特定するための信頼できる唯一の情報源を確立します。ASOCツールを使用して複数のソースからのデータを相関付けし、パターンを分析することによって、セキュリティチームはアプリケーションセキュリティの結果を重複排除し、優先順位付けできます。さらに、開発チームは主要なワークフローを自動化し、セキュリティプロセスを簡素化できます。これによって、脆弱性テストと修復作業の速度と効率が向上します。
アプリケーションセキュリティでのASOCの役割
ASOCを使用することで、組織はツール全体にわたってアプリケーションセキュリティのアラートを統合し、簡素化できます。さまざまなセキュリティテストツールからのデータを統合する中心的なプラットフォームとして、ASOCソリューションは開発チーム、セキュリティチーム、運用(DevSecOps)チーム間のコラボレーションも高めます。
ASOCの例
悪意のあるアクターが銀行業務アプリケーションの新たな脆弱性を悪用して機密データへの不正アクセスを試みるシナリオを想定してみましょう。残念ながら、このシナリオは想像に難くありません。新たなアプリケーションの脆弱性が出現するのは一般的です。しかし、DevSecOpsチームの60%が脆弱性の優先順位付けとトリアージをアプリケーションセキュリティの最重要課題として挙げているように、このリスクへの対処は困難な作業になる可能性があります。
ASOCを利用することで、脆弱性(銀行業務アプリケーションの脆弱性など)を迅速かつ効率的に解決できるため、アプリケーションコードの脆弱性管理が簡素化されます。さまざまなセキュリティツールからのデータを集約し、相関付けることによって、銀行は重大な脆弱性とそれによる潜在的な影響を簡素化された方法で特定できます。
ASOCとASPMの関係性
ASOCは、複数のツールからのアプリケーションスキャンデータを統合することによってアプリケーションの脆弱性を包括的に把握する最初のアプローチでした。ASPMツールはASOCの概念をさらに発展させ、ASOCによって生じたギャップを埋めるものです。ASPMは多くのツールからのシグナルを集約するだけでなく、アプリケーションアーキテクチャに関する現場のインサイトをもたらします。これによって、すべてのアプリケーションサービス、依存関係、データフローの包括的な可視性が得られます。この全体的な視点により、組織はアプリケーションコードの脆弱性、アプリケーションの設定ミス、データセキュリティとコンプライアンスの問題、アーキテクチャの弱点、およびその他のセキュリティリスクなど、アプリケーションのセキュリティポスチャを徹底的に理解できます。
ASOCの利点
自動化
ASOCの主な利点の1つに、自動化された脆弱性管理およびワークフローを通じてセキュリティプロセスを簡素化する機能があります。これによって、セキュリティチームの作業負荷が大幅に軽減され、インシデント対応が促進されます。ASOCのオーケストレーションと自動化の機能を活用することによって、組織はセキュリティ上の脅威をすばやく特定し、対処できます。その結果、潜在的な侵害に対する強固な保護が確保されます。
リソース割り当て
ASOCでは、個々のツールの脆弱性をトリアージする手作業の負荷が緩和され、結果の優先順位付けが行われることで、リソース割り当ての面で重要な利点がもたらされます。ASOCは既存の対策を中断せずにワークフローと修復プロセスを自動化することによって、DevSecOpsチームのリソース最適化に役立ちます。この効率性によって、チームはアプリケーションの強化や、カスタマーエクスペリエンスの向上と収益成長の推進を実現する機能の実装に注力することができます。
脆弱性管理
脆弱性の検出結果とアラートを一元化することによって、ASOCツールは組織のセキュリティポスチャの包括的なビューを提供します。これにより、脆弱性の優先順位付けと修復がさらに容易かつ効率的になります。脆弱性管理に対するこのプロアクティブなアプローチにより、開発チームは新たに出現する脆弱性の悪用の一歩先を行き、アプリケーションのセキュリティポスチャ全体を強化できます。
リスクの理解
ASOCはアプリケーションセキュリティアラートを単一のダッシュボードに一元化しているため、DevSecOpsリーダーは複数のアプリケーションセキュリティツールにログインせずにリスクプロファイルを理解し、リスクの高い問題を特定できます。こうした意識の高まりによって、戦略的な優先順位付けを考慮し、情報に基づく意思決定が可能になります。
コンプライアンスへの適切な対応
規制環境に対応する組織にとって、ASOCはコンプライアンスを示すために極めて重要です。ASOCのもたらす、セキュリティ対策への統一的視点と入念な脆弱性管理の根拠により、企業は確信を持って規制基準を満たすことができます。
進化し続ける脅威の状況に組織が適応しようと奮闘する中、アプリケーションを保護し、攻撃者の先を行くためには、ASOCソリューションへの投資が不可欠です。ASOCによってさまざまなアプリケーションテストツールからのデータソースが統合されるので、組織はアプリケーションの全体構成の中でセキュリティインシデントをプロアクティブに検知し、優先順位を付けることができます。可視性の強化とリスクの把握から、リソースの割り当ての簡素化と脆弱性管理の一元化に至るまで、ASOCはアプリケーションセキュリティを大規模に強化するための包括的なソリューションを提供します。